開業届は、個人事業主になったことを税務署に申請する書類です。
開業届の提出には、失業手当を受け取れない、健康保険上の扶養に入れない可能性があるといったデメリットがあります。
デメリットがあるなら、会社員の僕は開業届は出さない方がいいよね?会社にバレるのも怖いし…。
あなたの不安はよく分かります!私も以前は副業禁止の会社で働いていました。
副業は違法ではないとはいえ、バレるのではと不安に感じますよね。
しかし会社員が開業届を提出しても、開業が会社にバレることはありませんよ。
むしろ節税ができるなど、たくさんのメリットがあります。
この記事では会社員が開業届を提出するデメリットとメリット、会社に副業がバレにくくなる方法を紹介します。
開業届のメリットを理解して、節税をしながら副業を頑張りましょう!
会社員が開業届を提出するデメリット2つ!失業後に影響
会社員が開業届を提出するデメリットは、主に次の2つです。
デメリットがあるなら、やっぱり開業届を出すのはやめようかな…。
会社員の開業届の提出にデメリットがあると聞くと、出さない方がいいかも、と思ってしまいますよね。
しかし開業届は、事業を開始して1ヶ月以内に税務署へ提出することが義務付けられています。
開業届を提出することで、正式に「個人事業主」として認められますよ。
開業届を提出しなかったからといって罰則はありませんが、必ず提出しましょう。
それでは、会社員が開業届を提出することで生じるデメリットを、1つずつ説明していきます。
デメリット1 失業手当を受け取れない
会社員が開業届を提出している場合、退職後に失業手当を受け取ることはできません。
「失業手当」とは、会社を退職した後にハローワークで手続きを行い、再就職までの一定期間受け取ることができる給付金です。
退職しても失業手当を受け取れないのは辛いな…。どうして受け取れないの?
会社員が退職後に失業手当を受け取るには、次の3つの条件を全て満たす必要があります。
- 就職しようという意思があるにも関わらず、職業に就けない
- 就職できる能力があるにも関わらず、職業に就けない
- 積極的に求職活動を行っている
開業届を提出し個人事業主として認められている場合は、新たに就職しようという意思はなく、求職活動も行っていないと判断されます。
そのため、退職したとしても失業手当を受け取ることはできません。
デメリット2 健康保険上の扶養に入れない可能性がある
扶養に入っている人が開業届を提出すると、健康保険上の扶養から外れる可能性があります。
健康保険上で扶養に入っていると、健康保険料を支払う必要がありません。
しかし開業届を提出した場合、扶養から外れなければならないという規定を設けている健康保険組合もあります。
扶養には、次にあげる2つの種類があります。
- 税法上の扶養
- 健康保険上の扶養
開業届の提出がデメリットとなる可能性があるのは、後者の「健康保険上の扶養」に入っている場合です。
被保険者の扶養に入るための一般的な収入条件は、次の通りです。
健康保険組合は、それぞれ扶養に関するルールを設けています。
そのため、健康保険組合の規定によっては、年間収入が先ほどの条件を満たしていても、個人事業主は扶養から外れなければならない場合があります。
扶養に入っている人が開業届を提出する場合は、まず被保険者の勤めている会社の健康保険組合のルールを確認しましょう。
扶養に関するルールを確認しておけば、予想もしていなかった健康保険料の支払いを避けることができますよ!
会社員が開業届を提出するメリットは3つ!節税効果あり
絶対に開業届を出さないといけないのなら、メリットも知りたいな。
開業届の提出には、主に3つのメリットがありますよ。
節税ができるメリットもあるので、開業届を出すかどうか悩んでいるのであれば、ぜひチェックしてくださいね!
メリット1 青色申告で最大65万円の控除を受けられる
開業届を提出して確定申告の青色申告を行うと、所得金額から55~65万円もしくは10万円が控除される、「青色申告特別控除」を受けることができます。
確定申告とは、1年間の所得にかかる税金を計算して、税務署に報告する手続きです。
確定申告には「青色申告」「白色申告」の2種類があり、それぞれの違いは次のとおりです。
確定申告の種類 | 青色申告 | 白色申告 |
事前の申請 | 必要 | 不要 |
記帳方法 | 複式簿記または簡易簿記 | 簡易簿記 |
特別控除額 | ・複式簿記による記帳…55万円 ・複式簿記により記帳し、かつ e-Tax(国税電子申告・納税システム)を 利用して確定申告をする…65万円 ・簡易簿記による記帳…10万円 | なし |
提出書類 | 【複式簿記による記帳】 ・確定申告書B(計2枚) ・青色申告決算書(計4枚) 【簡易簿記による記帳】 ・現金出納帳 ・買掛帳 ・経費帳 ・固定資産台帳 | 【簡易簿記による記帳】 ・現金出納帳 ・買掛帳 ・経費帳 ・固定資産台帳 |
開業届を提出すると、青色申告を行うことができるようになります。
青色申告をするメリットは、所得金額から最大65万円の控除を受けられる点です。
この控除がどのようにお得か、簡単な例でチェックしてみましょう。
例)所得金額200万円、青色申告特別控除65万円が適応された場合
- 控除なし…200万円で税金を計算
- 控除あり…200万(円)-65万(円)=135万(円)
135万円で税金を計算【税金が安くなる!】
控除があればそれだけ低い所得金額で税金を計算しますから、大きな節税効果を得られますね。
しかし、青色申告には、事前申請や書類作成が面倒というデメリットもあります。
特に複式簿記での記帳は、簿記の知識だけではなく、たくさんの帳簿に転記する時間と労力を必要とします。
控除はとても魅力的だけど、会社員として働きながら、そんな時間も労力も費やせないよ…。
そんなあなたには、「やよいの青色申告22」のような個人事業者用会計ソフトの使用をおすすめします!
個人事業者用の会計ソフトであれば、年間1万円前後から利用できるものが多いです。
年間1万円ほどの金額であれば、青色申告による控除額で十分にまかなえますね。
便利なツールを活用しながら、青色申告にもぜひ挑戦してみましょう!
メリット2 副業で赤字が出たら損益通算で節税できる
開業届を提出していれば、副業で赤字が出たときに、その他の所得と合わせた金額で税金を計算できます。
これを「損益通算」と言います。損益通算の例を簡単に説明しますね。
例)会社員としての給与所得300万円、副業で50万円の赤字が出た場合
300万円-50万円=250万円
・損益通算なしの場合、所得300万円にかかる税金を払う
・損益通算ありの場合、所得250万円にかかる税金を払う 【節税効果が高い!】
損益通算をすると、赤字分だけ所得を低く申告できるので、支払う税金の額も小さくなります。
赤字が出たら、絶対にしないといけないね!
損益通算をすると、大きな節税効果が期待できますよ。
損益通算ができるのは、開業届を提出する大きなメリットですね。
副業収入300万円以下は損益通算できなくなる噂を解説!
そういえば、2022年8月に「副業収入300万円以下は損益通算ができなくなる」とニュースで見たけど、本当?
安心してください!副業収入300万円以下でも、事業での取引を帳簿に残せば、これまでと同じように損益通算はできますよ!
2022年8月1日に、国税庁は所得税基本通達について、次のような改正案への意見を募集しました。
(業務に係る雑所得の例示)
35-2 次に掲げるような所得は、事業所得又は山林所得と認められるものを除き、業務に係る雑所得に該当する。
⑴~⑹ 省 略
⑺ 営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生ずる所得
⑻ 省 略
(注)事業所得と業務に係る雑所得の判定は、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定するのであるが、その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証のない限り、業務に係る雑所得と取り扱って差し支えない。
「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(雑所得の例示等)に対する意見公募の結果について
所得税基本通達新旧対照表
わかりやすく説明すると、「その所得がメインの所得ではなく、かつ、その収入が300万円以下の場合は雑所得として扱う」ということです。
会社員の副業は「メインの所得」ではないので、副業での収入が300万円以下の場合は、改正案の「雑所得」の条件に当てはまりますね。
収入が雑所得だと、どうして問題になるの?
それは、収入が「事業所得」であれば損益通算できますが、「雑所得」だと損益通算できないからです。
会社員の副業収入を「事業所得」とするか「雑所得」とするかは、これまでもたびたび争点になってきました。
しかし、これまでは開業届を提出し「事業所得」として申請すれば、ほとんどの場合それが認められ、損益通算も可能でした。
300万円以下の副業収入を「雑所得」と決めると、損益通算ができないから、支払う税金が増えるんだね。
この改正案に多くの反対の声が寄せられたため、国税庁は2022年10月7日に、次のように改正案を修正しました。
(業務に係る雑所得の例示)
35-2 次に掲げるような所得は、事業所得又は山林所得と認められるものを除き、業務に係る雑所得に該当する。
⑴~⑻ 省 略
(注)事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。
なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合 (その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する。
「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)
(雑所得の例示等)に対する意見公募の結果について
わかりやすく説明すると、修正後の改正案は次のような内容です。
- その所得が事業所得にあたるかは、社会通念上「事業」と認められるかで決まる
- その事業での取引を記録した帳簿書類を保存していれば事業所得と認める
- 取引記録の書類がない場合、その収入が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実があれば事業所得と認める
取引の記録を帳簿書類に残せば、副業収入300万円以下でも確実に損益通算できるんだね!
その通りです!2022年10月16日時点では、この新しいルールは2022年所得分の確定申告から適用される予定です。
副業収入が300万円に届かない場合は、取引の記録を帳簿書類に残しておいてくださいね。
取引の記録をしっかりと帳簿書類に残しておけば、副業収入の金額を問わず、引き続き損益通算で節税ができますよ。
メリット3 屋号つき事業用口座を開設できる
開業届を提出して個人事業主と認められると、「屋号つきの事業用口座」を開設できますよ。
屋号とは個人事業の名前のことです。法人の場合は、会社名が個人事業での屋号にあたります。
通常は、あなたが今持っている銀行口座のように、個人名のみで口座が開設されます。
しかし屋号つきの事業用口座では、あなたの名前の前に個人事業名である屋号が入りますよ。
個人でしている副業で、屋号つきの事業用口座は必要なの?
屋号つきの事業用口座は、絶対に必要という訳ではありません。
ですが、屋号付きの事業用口座の利用には、次のようなメリットがあります。
特に、プライベート用の口座と分けられることは大きなメリットです。
副業で収入が増えると、次のような場面で屋号つきの事業用口座が活躍します。
- 確定申告をするとき
- 税務調査に対応するとき
- 税理士に相談するとき
どの場面でも、収支や経費など、事業に関わるお金の流れを把握する必要があります。
そんな時はプライベート用の口座と分けておくと、収支の情報を整理しやすいので便利ですよ。
プライベート用と一緒になっていると、どれが副業に関わるお金か、分からなくなるからね。
会社員として働いていると、副業に使える時間は限られてきますよね。
屋号つきの事業用口座を活用すると、収支の流れを把握しやすくなります。
収支の流れを分かりやすくしておくと情報を整理する手間が省けるので、空いた時間を休息や副業のために使うことができますよ!
時間の有効活用のためにも、ぜひ屋号つきの事業用口座を活用してくださいね。
会社員の開業届はバレる?注意するポイント2つ
会社員が開業届を出したら、会社にバレるんじゃないの?うちの会社、副業禁止なんだよなぁ。
会社員が開業届を提出しても、会社にそれがバレることはありません。
開業届は、個人事業を始めたことを税務署に届け出るための書類です。
税務署から会社に連絡はありませんから、会社員が開業届を提出しても副業がバレることはありませんよ。
しかし、絶対に副業を隠せる方法はありません。
副業は違法ではありませんから、隠すよりも、まずは会社に副業がしたい旨を相談することをおすすめします。
会社の許可を得られれば、バレるのが怖くてそわそわする必要はないからね。
あなたがどうしても会社に相談しづらいのであれば、私が以前実践していた、会社員の副業をバレにくくするポイントを参考にしてください。
安心して副業に取り組めるよう、ぜひチェックしてくださいね。
ポイント1 住民税を特別徴収から普通徴収に切り替える
会社に副業がバレないための最も大切なポイントは、住民税の納付方法を特別徴収から普通徴収に切り替えることです。
住民税の納付方法には、次の2つがあります。
給与所得者には、特別徴収による住民税の納付が義務付けられています。
そのため、あなたの会社の給与計算担当者に、住民税の金額を知られる可能性があります。
住民税は1月1日から12月31日までの1年間の収入をもとに計算され、収入が高くなると住民税も高くなります。
給与が増えていないのに住民税だけが高くなると、給与計算の担当者に副業を疑われる可能性があります。
このような住民税の金額変動で、会社に副業がバレるケースが多いです。
特別徴収が法律で義務付けられているんなら、絶対に副業もバレるんじゃないの?
特別徴収が義務付けられているのは、あくまでも給与所得にかかる住民税のみです。
事業所得にかかる住民税のみを普通徴収に切り替えれば、会社にもバレにくくなりますよ。
次は、住民税の納付方法を普通徴収に切り替える方法を、簡単に説明します。
事業所得にかかる住民税を普通徴収に切り替える方法
事業所得にかかる住民税の納付を普通徴収に切り替えるには、次の2つの方法があります。
確定申告をする場合は、確定申告書 第二表で次のように記載すれば、住民税を自分で納付する「普通徴収」に切り替えることができますよ。
確定申告をしない場合は、あなたがお住まいの各市町村に住民税を納付する申請をします。
納付方法を変更する手続きは、各市町村によって方法が異なります。
詳しい方法は、お住まいの各市町村役場に問い合わせてくださいね。
ポイント2 会社で副業を疑われる行動をとらない
2つめの副業をバレにくくするポイントは、会社で副業を疑われる行動をとらないことです。
会社で副業がバレないようにするためには、次の2つに気を付けて行動しましょう。
1つずつ簡単に説明しますね。ついうっかり会社でしてしまわないように、一緒にチェックしましょう!
会社内で副業にかかわる作業をしない
副業に関わる作業を会社ですることは、副業をしていることがバレるきっかけになります。
副業が忙しくなると、少しの時間でも有効活用したくなりますよね。
しかし、会社でそのような作業をしていることが他の職員の目に付くと、副業をしているのではないかと思われる可能性があります。
トイレで作業するのも良くないかな…。
トイレにこもって作業をする人も時々いるようですが、それもおすすめしません。
時間が惜しい気持ちは私もよく分かりますが、会社にいる間は本業に集中しましょうね。
職場の同僚に副業をしていることを話さない
会社の同僚に副業をしていることを話すと、副業が会社にバレる可能性が高まります。
副業が軌道に乗ると、嬉しくなって仲の良い同僚に話したくなりますよね。
副業で収入が増えると、つい話したくなるんだよなぁ。
話したくなる気持ちは、私もよく分かります!
頑張った成果が収入として現れると、嬉しくなって誰かに聞いてほしくなりますよね。
ですが、あなたが副業をしていることを知った同僚が、絶対に黙っていてくれるとも限りません。
お酒の席でついうっかり…といったこともあり得ます。
副業については、会社とは関係のない友人や家族、副業仲間と話しましょうね。
まとめ
- 会社員が開業届を提出するデメリットは、失業手当を受け取れない、健康保険上の扶養から外れる可能性があること
- 扶養に入っている人が開業届を提出する場合は、被保険者が勤めている会社の健康保険組合のルールを確認した方がよい
- 会社員が開業届を提出するメリットは、青色申告特別控除が受けられる、副業の赤字を損益通算できる、屋号つき事業用口座を開設できること
- 副業収入300万円以下でも、取引の記録を帳簿書類に残せば損益通算できる
- 会社員が開業届を提出しても税務署から会社に連絡はいかないので、副業はバレない
- 会社に副業をバレにくくするポイントは、給与所得以外の所得にかかる住民税の納付方法を普通徴収に切り替える、会社で副業を疑われる行動をとらないこと
- 給与所得以外の所得にかかる住民税の納付方法の変更は、確定申告する場合としない場合でやり方が違う
- 副業を疑われる行動には、会社内で副業にかかわる作業をする、職場の同僚に副業をしていることを話すなどがあげられる
会社員が開業届を提出するとデメリットもありますが、節税ができるたくさんのメリットもあります。
開業届を提出しても会社にはバレないので、確定申告や損益通算などを活用して節税をしてくださいね。
開業届のデメリットとメリットを理解して、私と一緒に副業に励みましょう!
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